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足摺岬のmhのレビュー・感想・評価

足摺岬(1954年製作の映画)
5.0
人気作家の代表作「足摺岬」に同作家の短編「絵本」、「菊坂」をくっつけてひとつのお話にしている。
監督は吉村公三郎、脚本は新藤兼人、撮影は宮嶋天皇と万全もバンバンゼン。
メインスタッフはもとより、北星映画と近代映画協会なのでもちろん左。それがわかっているともうちょっとだけ楽しめる。
・昭和九年頃の共産党員の日常もしくは弾圧の様子。
・無心を断ってきたプチブルがインターナショナルを口ずさんでるとこ。
・見たこと無いくらいにリアルな特高のみなさん。
このあたり、東宝争議の経験が生きているんじゃないかな。
本石区・本郷菊坂町(元 文京区本郷五丁目)の下宿界隈の様子も眼福。撮影当時の町並みなんだろうけど、坂が多いという街の特色をよく捉えていた。御茶ノ水駅や聖橋なんか、いまの面影もあるんだよなぁ。こういうのひとつとっても宮島義勇というカメラマンがどれだけすごいかがよく分かる。
外から暗い室内にカメラ向けててガラスの向こうに主人公がいる。そのガラスには走る戦車が写ってるのとか、とんでもない撮影が連続する。
傘の先がふすまを破って飛び出てくる。そのままふすまが開くと特高刑事とか、吉村公三郎がやりそうなかっこいい演出も最高だった。
中盤からの畳み掛ける不幸もすごかった。
終盤になってようやく「足摺岬」の本編。薬の行商人やお遍路さんの人間臭さが涙を誘ってくる。
これとんでもなく面白かったんだけど、VHSしか出てないというこんな世の中間違っとるね。
面白かった!
mh

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