足摺岬の作品情報・感想・評価

足摺岬1954年製作の映画)

製作国:

上映時間:108分

3.8

「足摺岬」に投稿された感想・評価

貧しさを生きるザ・社会派な前半も最高だけど、直球メロドラマになる後半が最高の最高な聞きしに勝る傑作。

思想弾圧、そして苦学の上に苦学を重ねた挙句に病いになって吐血までしてしまう木村功。とうとう死を決意して、絶望のまま何故か片想いの相手(津島恵子)が住む足摺岬に向かってしまう。

まずは死を決意したのに、生の象徴である女性に会いに行ってしまう木村功が可愛い。

片想いの相手に会えるが病いに伏せてしまう。そこでも「(足摺岬で身投げすると)遺体があがって来ないんでしょう?」と津島恵子に「オレ、自殺しちゃうよ。分かってる?」光線を浴びせる木村功がこれまた可愛い。

「自分独りだけが苦しんで絶望したかのような顔をしているけど、ホントは誰かに甘えたり、助けてもらいたいんでしょー」と言いたくなるようなキャラを演じさせたら木村功はナンバーワン。本作ではその彼の良さが120%発揮。

足摺岬の宿屋で出会う、薬行商人(殿山泰司)とお遍路爺さん(御橋公)のやりとりが、世の中悪い人ばかりじゃないと感じさせるユーモアで胸がジーンときてしまう。さすが。

宮島義勇の撮影もため息が出るほど素晴らしい。特に感心したのが、ガラス越しに木村功を写してそのガラスに水滴がついてきてゆっくり引きながら雨となっていくところ。アンデルセンの古書を買って外に出るとガラスに道を我が物顔で走る戦車が写り込むところも素晴らしい(戦車を直接撮らないところに軍国主義が迫りくる感じが伝わる)。

木村功の下宿の子供で不治の病に伏せる子役時代の河原崎健三が、可哀想な感じでもなく嫌味でもなく、大人びてるわけでも子供コドモしているわけでもなく、達観というよりただ現実を受け入れているような演技をしていて素晴らしかった。

貧しさゆえに犯罪者扱いされる津島恵子の弟のやるせなさ、木村功とザ・お母さんとの関係と父親との確執などなど、前半も見所ばかり。

通して不幸の連べ打ちだけど観終わったあとの悲壮感は不思議とあまりない。そこがまた良かった。何があっても生きるのだ!というメッセージが伝わりました。
いつだって人の心の中の感情は時代に置いてけぼりになる。
生きるって本当に苦しいなぁ。
幸せのために生きるには、少し勇気がいる。
流されて流されて、、
一生懸命にただただ生きることしか出来ない。
岬の岩に打ち付ける激しい波のように試練は何度も何度もやってくる。
それでも生きる。
死ぬことは負けることだから。

『生きろ。』と強く訴えてくる映画。苦しく真っ暗な時代に撮られた映画。静かだけれどとても強い映画。

今観てよかった。