そーた

エクソシストのそーたのレビュー・感想・評価

エクソシスト(1973年製作の映画)
3.5
ホラーと見るべきか

スリランカにむかし行きました。

スリランカでは悪魔払いの儀式が今でもあるらしくて、田舎では未だに行われているんだとか。

スリランカは仏教国なんで、悪魔と言ってもキリスト教のそれとは違いそうなんですが、現代に残るそのような風習に驚いた記憶があります。

そんな悪魔払いを題材にした誰もが知っているこの作品。

ホラーの枠では括りきれないメッセージ性がありました。

悪魔に取り憑かれた少女と神父二人の死闘の物語。

序盤は少女が徐々に悪魔に憑かれる様が描かれます。

家族の戸惑いや、医者が匙を投げる様子など、怪奇現象に対してオカルト扱いをせず、むしろひとつの現象として向き合っている感じがします。

だからこそ、悪魔の存在がどこかシュールでさえあり、笑えてしまうのが不思議な感覚。

その悪魔が引き起こす数々の怪現象はもはや伝説となってますよね。

宙に浮いたり、首が回転したり、緑の液を吐いたり。

ブリッジして階段を下るシーンは超が付くほど有名。

そんな名場面を散りばめつつ、物語は最後の対決へと進んでいきます。

神父二人がやたらカッコいいんですよね。
対決前に身支度を整えるシーンに宗教の持つ静謐さと峻厳さを感じました。

でも、そんな宗教をもってしても中々悪魔には打ち勝てない。

悪魔は強いというよりはしつこいという感じで、精神力による凄まじい戦いが繰り広げられます。

そして、不意に迎える衝撃の結末。
唖然となりました。

そのショックからどうにか立ち直ると、何を言わんとしているのか自ずと考えていました。

そこがホラー映画らしからないところ。

まず、悪魔って未知なるものの象徴なんだと思いました。
だから、スリランカの悪魔払いと本質は同じなんですね。

それで、この映画では未知なるものに様々な方法で挑んでみるわけです。
家族や医者、警察に宗教など、どれもなかなか決定打を打てずにいます。

もちろん、そのなかでキリスト教という宗教が悪魔に対する最後の切り札になってはいるんです。

そうは言っても、この映画では宗教の優位性は感じず、むしろ宗教も未知なるものに挑む一つの手段のように描かれている。

それでね、衝撃の結末から未知なるものを克服するのは人間の意志だと言っているんじゃないかと感じたんです。

人知を超えるものに挑んでいく為には、人間の強い意志が必要。

それは、裏を返せば人間の最大の強みなんですね。

あの神父たちは宗教でもって未知なるものに立ち向かったのではなく、強い意思を持った人間として対峙したのではないか、そんな風に見るとこの映画とても面白いんです。

だから、人間の強さを観させてもらった気になるんです。

これはホラーじゃない。

これから皆にはヒューマンドラマと言おうと思います。
そーた

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