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配達されない三通の手紙のJumblesoulのレビュー・感想・評価

配達されない三通の手紙(1979年製作の映画)
3.5
監督が野村芳太郎なので、凡作『砂の器』のように原作無視路線かと思ったら珍しくほぼ忠実に描いたため、重厚なサスペンス傑作となった。
その原作は、アガサ・クリスティと並ぶミステリーの巨匠エラリィ・クィーンの長編傑作『災厄の町』。ライツヴィルという架空の町シリーズで、映画では山口県の萩を舞台にしている。
ミステリーとしては殺された女性の正体や、殺人実行犯は早い段階で分かってしまうので謎解きという点では少し弱い。だが登場人物達が生き生きと描かれ、人間群像劇として優秀といえる。
吉永小百合と並ぶ昭和のお嬢様女優の栗原小巻が、終盤に嫉妬に狂った女の情念を演じるのが最大の見どころ。松坂慶子も汚れ役を上手く演じていたと思う。
一場面だけの出演だが、ベテランの北林谷栄が彼女ならではの渋い名演を見せてくれる。こんな芝居のできる俳優は現在では皆無だろう。
ちなみにこの作品、学生の頃に初めて新宿で映画デートをした時のもので、一緒に観た女性は鑑賞後に「松坂慶子の尻が綺麗だった」と言ってたような記憶がある。
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