荒野の狼

さすらいの女神(ディーバ)たちの荒野の狼のレビュー・感想・評価

4.5
マチュー・アマルリック(監督・主役)による、フランス流『旅芸人の記録』である。出てくる人物や時間空間が、全てそれぞれ一編の叙事詩、叙情詩であり、映画そのものもそれゆえに壮大な詩のように美しい。詩がなぜ美しいかといえば、そこに見えざる純粋性を見るからだろう。「言葉で表せぬものを表す」という芸当を言葉がやってのけるのだ。
ジャンルで言えばロードムービーなのだろうが、これをそう呼んでしまうとこの映画の持ついちばん大事な部分が、ぶっ壊れてしまう。ふつう詩は、文字で表現するものと決まっているが、この映画を見ていると映画こそ、それに最もふさわしい表現手段じゃないかと思えてくる。この映画に「詩」を見る事が出来るか出来ないかが、評価の判断基準になるだろう。それはまた、美の判断基準でもある。
スクリーン上あちこちで語られる、例えばこんな『あなたがくれたのよ、人生という名の散歩を』なんていう、踊り子の一言も、まさしく輝くポエムではないか。
荒野の狼

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