三樹夫

砂の惑星の三樹夫のレビュー・感想・評価

砂の惑星(1984年製作の映画)
3.7
ドゥニ・ヴィルヌーヴ版の2本合わせて5時間以上の本編の長さになるpart oneとpart twoの内容が、本編の長さは2時間15分のこの映画に詰まっている。その結果どうなったかというと、もの凄いダイジェスト感が漂う(特にドゥニ・ヴィルヌーヴ版のpart twoにあたる後半)。ドゥニ・ヴィルヌーヴ版は冗長だしリンチ版はダイジェストだしで、丁度いいやつねぇのかという東京03のコントみたいなことになっている。モノローグという名の説明セリフの連発はもはやヤケクソとも思える。
リンチは今作に対して不本意だったみたいで、とにかくダイジェスト感漂う映画だが、ただリンチはリンチで奇形描写に注力しだすという、流石リンチというちゃんと爪痕は残している。浮かぶデブの方のハルコネンの皮膚描写なんかしてどうするんだ。最もリンチ的な奇形はギルドマンで、バカでかい水槽の中にこんなのが入って交渉しに来るとかセンス・オブ・ワンダー過ぎる。
ハルコネンの3バカはドゥニ・ヴィルヌーヴ版でも出てくると雰囲気が明るくなる面白キャラだったが、今作では面白キャラ度が増しており、浮かぶデブの方のハルコネンなんかただの変態オヤジだった。

頓挫したホドロフスキー企画の狂ったスタッフキャスト案の継承なのか、「予言のテーマ」はブライアン・イーノ、音楽はTOTO、ハルコネンのイキってる奴はスティングと、音楽畑の外部から人を連れてきている。
CGはないので特撮を駆使して撮られた超大作であり、全編に渡り手作り感がある。オープニングでこの映画はフェデリコ・デ・ラウレンティスに捧ぐとあるが、フェデリコ・デ・ラウレンティスはディノ・デ・ラウレンティスの息子で81年に飛行機事故で亡くなっている。とにかくディノ・デ・ラウレンティスpresentsとクレジットでドでかく出て、ディノ・デ・ラウレンティスのこれは俺の映画やというのがオープニングから伝わってくる。
リンチはルーカスから「君の映画だ」と『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』の指名を受けたが、「僕がやるような映画じゃない」と言って断って結局この映画の監督をしたが、リンチが当時本当に撮りたかったのは『ロニー・ロケット』という「身の丈1メートル足らずの赤毛で体に故障のある男と、60ヘルツの交流電流」の話の映画で、この後も『『ワイルド・アット・ハート』がカンヌを受賞し『ツイン・ピークス』がヒットしてブイブイいわせていた時にも話が持ち上がり、ディノ・デ・ラウレンティスがプロデュースを検討しコッポラのスタジオも関心を示したが、両方とも破産したので話は流れ、『ロニー・ロケット』は幻の映画となっている。
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