KANA

暴走機関車のKANAのレビュー・感想・評価

暴走機関車(1985年製作の映画)
3.6
1966年に黒澤明がハリウッドで作るために書いてお蔵入りしていたシナリオが新たに3人のライターによって手を加えられ、19年ぶりにコンチャロフスキー監督によって映画化された作品だそう。
脱獄+パニックアクションのスペクタクルもかなり面白かったし、人間ドラマとしてもアメリカン・ニューシネマに通じるものがあってジ〜ンときた。
凍てつく銀世界の中、猛スピードで駆け抜ける列車の描写は迫力満点!しかも機関士が(都合よく?)心臓麻痺で倒れてコントロール不能。ヘリを駆使して迫り来るランキン所長に捕まるが先か、衝突して死ぬが先か、ハラハラドキドキ‼︎ その焦燥感、寒さ、そして痛さはハンパない。
ジョン・ヴォイドといえば『真夜中のカーボーイ』のイメージだったから、これのマニーの野獣っぷりにはびっくりした。正直ニガテなキャラ。加えて相棒となる若造バック(エリック・ロバーツ)はイキがるばっかりでこれまた繊細さに欠けるし……なんたけど!脱獄後下水道を抜けて機関車に乗り込んでからは二人のハーモニーに少しずつ変化が。いや、バックだけかなぁ、実際変化があったのは。マニーはずっと頑固で、あるシーンなんかエゴ丸出し。ところが、ラストだけはカッコよかった。哀愁漂う男の美学。
現場と交互に挟まれる、パニクる管制司令室の人間模様を映したシーンもなかなか人間臭くて好きな演出。
クロサワセンスもビシビシ伝わる隠れた傑作。
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