ゆみモン

その人は遠くのゆみモンのネタバレレビュー・内容・結末

その人は遠く(1963年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

母親と大学受験勉強中の浪人生・量介(山内賢)の二人暮らしの家に、親を亡くして一人になった遠縁の娘・奈津子(芦川いづみ)が、同居することになる…という、少女マンガかラノベのような設定の物語。

この当時は、たとえ成人していても嫁入り前の娘を一人暮らしさせるということは考えられなかった時代なのか、親族会議で引き取る家庭が決められる。
純情な好青年・量ちゃんの前に現れた奈津子姉さんは、大学出で何でもできて、上品で、とにかく可憐で美しい。量ちゃんが奈津子に惹かれるのは当然の成り行きだ。
現代なら、すぐに一線を越えてしまうだろうが、そうはならないのがこの映画のいいところだ。
少しぐらい歳上でも親戚でも、こんなに惹かれ合っているなら、量介の就職を待って結婚するぐらいのことは、この時代でも可能だったろうに…。そう簡単にはいかない。

奈津子は、品のない大学講師と見合いして結婚し、大阪に行ってしまう。無事大学に合格した量介は、奈津子の家庭に遊びに行くが、その変貌ぶりに落胆する。
そして、量介の母親が車(タクシーか?)に撥ねられて亡くなってしまう。
その車に乗っていた若い女性・恵以子(和泉雅子)が、量介を好きになってしまう。量介も、若くて溌剌とした恵以子に、その家庭環境への同情からか親切に接するようになる。

その後、奈津子の夫の浮気や、大学を勝手に辞めて手を出した事業に失敗したこと…などで、奈津子は離婚を決意し、家を出て東京に戻って来る。東京に来た奈津子は、大阪に居る時とは異なり、以前の上品な雰囲気になっている。

恵以子の方も、闘病中の父親が亡くなり、以前から母親と関係していた男が家に入る。その男に襲われかけたことから、家を出て量介を頼って来る。
量介は、恵以子の下宿が見つかるまで自分の部屋を明け渡してやる。

奈津子と量介がやっとここで一緒になれば、二人にとって一番幸せだったのかもしれない。が、奈津子は、量介と恵以子が結ばれることが最良だと考えたのだろう。自分は、九州で教職に就くために旅立つのだ。
奈津子の青春が、最も波瀾万丈だった。

山内賢の、少しずつ大人の男らしくなっていく演技がいいと思った。
芦川いづみは、他の女優ならあざとさが目についてしまいそうな表情や台詞も、とにかく魅力的だ。夫となった藤竜也は、どこに登場していたのかわからなかった。