イワシ

鶴は翔んでゆく/戦争と貞操のイワシのレビュー・感想・評価

4.6
ストーリー自体はよくある戦争メロドラマなのだけど、溢れ出るような熱気が伝わる画面の数々が凄まじい。空間を埋め尽くす群衆、縦横に動き回るカメラワークによる長回し、アバンギャルドな画面と音のコラージュ等々。ソビエト映画特有の群衆シーンの異様な感じは何なんだろう。高橋洋は「たとえばソビエトでは戦争映画を作る時、それを「戦争映画」とは呼ばずに「芸術的記録映画」って言うんですよ。戦場なら戦場を史実に基づいて再現して、その状況を切り取るというか。」と語っていたが……。

アレクセイ・バターロフが銃弾に倒れる瞬間に垣間見るフラッシュフォワードとも想像の光景ともいえない映像の異様さ。なぜか『アッシャー家の末裔』を連想する。天を見上げながらグルグル回転する主観映像が花嫁衣装に身を包むタチアナ・サモイロワの風に揺れるベールと黒髪のクローズアップのスローモーションにディゾルブしつつ、その映像に助けを呼ぶ仲間の兵士の声が重なる。
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