りゅういち

おもひでぽろぽろのりゅういちのネタバレレビュー・内容・結末

おもひでぽろぽろ(1991年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

高畑勲監督なので、大人向けの作品。小さい時に見るとあんまり面白くないかもしれませんね。高畑さんの作品は興行的にはアレだけど、高畑勲に惚れ込んだ人が援助してくれたんでしょうね。

主人公のタエ子は東京生まれで田舎に憧れを持っていた。姉の結婚相手のツテを頼りに、山形で農業の手伝いをさせてもらったことがあるタエ子は、今回二度目の山形訪問になる。

タエ子は過去の記憶をよく呼び覚ます女性で、劇中しばしば「5年生の私」を登場させ、昔の記憶を思い出す。
順不同

大野屋の3色すみれ風呂やローマ風呂をはじこしてのぼせたこと、

缶詰めじゃなくて、ちゃんとしたパイナップルを初めて食べて、予想を裏切られたこと。

分数の割り算の理屈を理解しようとしすぎて算数でつまずいたこと

生理のこと
別のクラスの男の子と恋をしたこと

スカウトされそうになったが、父親が大反対して叶わなかったこと、

転校生との苦い記憶等
様々な思い出が出てきます。

分数の割り算については、あれを何も考えず、ただひっくり返してかけるだけ ということをしていればその後の人生も上手くいくなんてタエ子は言ってました。謎の理論ですね(笑)

山形に着くと、トシオさんが迎えに来てくれていました。
トシオさんと言うのは、
タエ子の姉、ナナ子、ナナ子の夫のミツオさん、ミツオさんの兄のカズオさん両人の又従兄弟にあたる人物です。

農業の手伝いをしながら、トシオさんと蔵王に行ったり、色んな話をします。そのうちタエ子は年下のトシオさんにどんどん心を開いていきます。

転校生のアベくんの話の時はトシオさんかっこよかったなー。タエ子が長年勘違いしていた事象を、一気に解決してくれたような気がしました。

終盤、トシオの母ちゃんが突然タエ子に結婚話をもちかけてタエ子は様々な思いが湧き上がり家を飛び出してしまいます。

あれはたしかに突然だったけど、適当にあしらわずに、自分の気持ちにマイナス気味ではあるが向き合って、どうしようもなくなって飛び出してしまうタエ子も、素晴らしいと思いました。アベくんのくだりはその後出てきて、トシオが迎えに来てくれるところまで出てきます。

感動する作品と言うより、懐かしさを感じるのかな。
さとり世代とか、都会育ちの子が見てもなんじゃらほいって感じかもしれませんが、劇中タエ子とトシオのやりとりで興味深いものがあります。

トシオ「都会の人は田舎に来ると、自然が自然がって有難がるけど、この景色は全部百姓が作ったものだ。昔っから代々の百姓が作ってきたんです。」

タエ子「だからなぜか懐かしく感じるんだ。」

時代も違うし、田舎に憧れがあったとはいえ、タエ子は東京生まれ東京育ちです。東京生まれ東京育ちの人が、田舎の景色に懐かしさを感じるでしょうか?
脈々と受け継がれてきた日本人の記憶が、どこかでみんな共有されてるのかな?と思いました。

エンディングの5年生のタエ子と級友たちが出てくるあのシーンの捉え方は人それぞれですが、
最後まで5年生の私を連れてきたのに、トシオと車に乗って、走り去るシーンでは5年生のタエ子たちは置いていかれてしまいます。その時の5年生のタエ子ちゃんたちの顔は、不思議な表情を浮かべ、どこか寂しげでした。

あれっ、行っちゃった。どうして連れて行ってくれなかったんだろう?あれ?いつものタエ子と違う。もうついていけないんだ。っていう顔をしていました。

あれは大人になったタエ子が、昔の自分と折り合いをつけたんだと解釈しています。

僕もいつまで経っても昔の自分を色んな場面で登場させてしまいますので、タエ子のように、折り合いをつけたいですね。

思い出は美化されると言いますが、僕の場合は、ノスタルジックな気持ちが強くなるだけで、内容が盛られたりはしませんね。昔のことを思い出すと、ノスタルジーにやられて変な気持ちになります。

ノスタルジックに浸りたい方にもおすすめの映画です。
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