みんと

パリの灯は遠くのみんとのネタバレレビュー・内容・結末

パリの灯は遠く(1976年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ドッペルゲンガーとも考えられる同姓同名のユダヤ人の登場が、ユダヤ人への嫌悪や収容所行への恐怖から、存在喪失への恐怖へと変化させる。そして、同姓同名のユダヤ人への妄執にとりつかれる。
特に、冒頭の独立した検査のシーンや、実際にあった大量検挙事件を取り入れている点が素晴らしいと思ったが、残酷な史実をベースにして人が狂っていく様を不気味に描くという、二つの恐怖を重なり合わせ、あのような結末に持っていくという発想。それがそもそも素晴らしい。
黒人差別などとは違い、見た目に大きな違いのないユダヤ人への差別。それが、“アイデンティティの喪失”という本作の一つのテーマの一助となっていた。

度々出てきた鏡の演出が、やはり特に印象的だろう。
「ここに映っている自分は誰なのか。本当に自分なのか。」

最後の収容所行の列車で、ユダヤ人の弱みに付け込んで安く絵を買い取っていたシーンを反芻するが、これは自分の行った悪事に対する報いを表すのか、それとももう一人のクラインとの同一化を表すものなのか。

細かい視覚的なヒントがたくさん隠れていそうなので、もう一回は観なきゃいけない気がする…。
みんと

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