櫻イミト

続・菩提樹の櫻イミトのレビュー・感想・評価

続・菩提樹(1958年製作の映画)
3.5
「サウンド・オブ・ミュージック」(1964)の前身となる西ドイツ映画「菩提樹」(1956)の第二部。

トラップ一家の史実に基づいたアメリカ亡命後のストーリー。食べていくために、どのように合唱団を売り出し成功したかの過程が描かれアメリカンドリーム物語としても楽しめた。第一部に引き続き”歌の力”がテーマとなっていて、彼らの素朴で美しい歌が異国の人々の心を動かし未来を切り開いていく様は、楽しく感動的だった。

本作は1950年代西ドイツで流行ったハイマート(故郷)映画の代表作とされている。ハイマート映画とは「戦争によって故郷と財産を失った人々が、新しい故郷を求め、作り出し、幸福を取り戻す」というもので、まさしく本作のプロットそのもの。

戦前は世界屈指の映画大国だったドイツだが、戦後は人材流出で急激に落ち込み、再び隆盛するのは1970年代ドイツ・ニュージャーマンシネマまで待つことになる。この間のドイツの大衆映画は日本では殆ど観ることが出来ず、本作は当時のドイツの人々の精神を推し量る上でも大変興味深い作品と言える。

「サウンド・オブ・ミュージック」のファンであればトラップ一家のその後が描かれているので、ぜひ第一部と合わせての鑑賞をお勧めしたい。
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