美大生A

時計じかけのオレンジの美大生Aのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
4.0
非情な犯罪少年よりも、我々の上に立ち制裁を下すリーダー的存在の方がよほど悪だった。
出所してからの立場逆転の様、どちらもやっていることは変わらない。
狂った青年よりも、一見正常、一般に見える人間の方が腐っていたりする。
青年の目を背けたくなるバイオレンスがダイレクトに描かれている描写に対して、具体的な暴力シーンは描かれず表立って酷いことはしてないがよくよく考えると恐ろしいことをしている人間の描写、こういう風にみせるのか…うますぎる…。一見騙されてしまう。目に見える暴力の方が明らかに人は、ひどい!非情だ悪だ!という思考にもっていかれやすい。でも同じくらいの悪が青年を取り巻く大人たちによって行われていることに気付いた時、この映画は相当胸糞だなとなった。
社会的判断力が欠けている少年のバイオレンスシーンよりも吐き気がする。
あまりにもレイプシーンとか無理すぎて途中で「オイちょっと待て、なんだこのSMチックなエロ映画!純情なわたしにはシゲキが強すぎるワ!」と心の中の乙女がかなりストップをかけてきたので観るのやめようかなと思ったが、この感情がこの映画には大事なんだなあと後々思う。
それもこの映画の一興なのだろう。残酷なシーンがあるからこそ、その後の大人たちによる“スーパー残酷”が際立つのだろう。

キューブリックらしい音楽や映像の美しさと、行われていることの酷さの対比が相まってシュールで不思議な感覚を創り出している映画だった。
もう一度観たいかと言われると、心の中の乙女が「うーん、イヤッ!」って言ってますが。
美大生A

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