バルべ

時計じかけのオレンジのバルべのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
4.2
いやー、人って怖い。
アレックスや実験に関わった人々、アレックスを政治的に利用する人々…もちろん彼らは怖いです。
ただ、あらゆる人やシステムを皮肉ったこの作品では、あれだけ序盤に暴力を強調されたアレックスにしか同情の余地がないんですよ。そう、この映画はアレックスに同情してしまう自分が怖いんです。


細かい内容も一応触れておきます。

序盤はほんとに異世界のような話が続くので、アレックスの家で学校の話が出たときは急に身近に感じてしまい、不思議な恐怖に襲われます。こういう世界観の作り込みというか、異世界的なんだけど急に現実をぶっ込んでくるそのバランスが素晴らしかったです。

アレックスの実験シーンは観てる側も気が狂いそうになります。戦争映画を明るい音楽と合わせて見せたり、さっきまで暴力に勤しんでいた人間がたいした暴力ではない描写に叫んだりしているんですから。

終盤で音楽を聴かせるためだけに、あれほど純情になったアレックスに果たして睡眠薬は必要だったのかは少々疑問ですが、カルト映画だけど本当に終始抜け目がないあたりはさすがキューブリックといったところでしょうか。
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