Supernova

市民ケーンのSupernovaのレビュー・感想・評価

市民ケーン(1941年製作の映画)
4.5
「バラのつぼみ」という遺言を残し、この世を去った資産家・新聞王ケーン。彼の不可解な遺言の真相を追究するお話。
真相を追うジャーナリストがケーンを知る人物を尋ねる現代パートと、ケーンの栄光と没落の半生を描く回想パートを行き来する。

2回目。久しぶり。

以前は「映画史上最高の傑作」という評判に踊らされ、作品を純粋に楽しむ姿勢を蔑ろにして頭でっかちに歴史的価値を分析しようとしていた。反省。そのせいで面白いともすごいとも思えなかった。
今なら楽しめるかもしれないと思い再鑑賞。

端的に言ってすごかったし、面白かった。
カメラワークが卓越している。撮影技術がこの時代の映画の中でも格別。つっても自分は40年代の映画や、それ以前の映画は合わせてせいぜい30本程度しか見たことがない。そんな自分ですら、今となってはこの作品の凄さが良く理解できる。こんな技術当時の他の映画では観たことがない。具体的な技術の名前は分からずとも、明らかに映像が他の作品と比べて違う。感覚的にそれが分かる時点で、この作品はすごい。
現代の水準で比較しても全く遜色ない。そう映画に詳しくなくとも、多少の比較対象さえあれば、この程度なら理解できるはず。

ストーリーテリング的には、時系列の入れ替えが称賛の的になるけど、それは今となっては当たり前。あまりにもスタンダードになりすぎて凄さが理解できないってのが正直なところだよね。仕方ないと思う。
技術云々に関しては、『ターミネーター』とか『スターウォーズ』を観て「この時代にしてはSFXすげぇ」って思うように、今の時代から見れば明らかに劣った技術である事は理解した上で「これが先駆者か」程度の認識でいいと思う。何がすごいのかの予備知識がないと分かりっこないのは当然。
だから「すごさ」にピントを合わせて、変に期待しすぎると肩透かしを食らう。映画は気楽に観よう。

ただ、俺が惹きつけられたのはそこじゃない。技術的な云々抜きにして、純粋に話が面白い。そこを以前の俺は完全に見落としていた。

ケーンは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』と『アイリッシュマン』を彷彿とさせる。ウェルズがディカプリオに見える。型破りな人物。何もかも意識せずにいられない。
最近の作品で言えば『オッペンハイマー』もあらゆる意味で本作の系譜に入る事は間違いない。

金だけあっても人は愛と温もりは得られない。物で心の隙間は埋められない。

めちゃくちゃ面白かった。

しかしこの作品で残る一番の謎はいかにして467を475と誤訳できたかだ。
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