のまねこ

市民ケーンののまねこのレビュー・感想・評価

市民ケーン(1941年製作の映画)
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再視聴
奥行きのある長回しは、アンドレ・バザンが「主題の深さから画面の深さへ」と述べたように目を見張るものがある。そもそも本作は同時代の作品と比べてショットが少ない(≒ショットの持続時間が長い)のが基本的なリズムであるが、一方でその中に幾つか存在する切り返しや短いショットに関する分析はあまりなされていないように思う。例えば溝口に対しては、基本的なリズムが長回しであることによって際立つ切り返しの用い方が天才的だと断言する事が出来る一方、オーソン・ウェルズ、殊に『市民ケーン』においてはどうだろうか。映画は一つのショットで評価を決めることは出来ない。奥行きのあるショットが素晴らしいと言うことは出来ても、ショットの組み合わせ、つまりモンタージュが優れているとは思えなかった。蓮實がインタビューで語ったように、「映画史的な視点から、エイゼンシュテインと『市民ケーン』の盲目的な絶対視を慎しみ、それらを相対化すること」が必要なのかもしれない。
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