映画狂人

いぬの映画狂人のレビュー・感想・評価

いぬ(1963年製作の映画)
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いぬとは密告者を指す隠語。
今までメルヴィルの最高傑作は『サムライ』だと信じて疑わなかったが、いよいよ分からなくなってきた。
地下道を歩く男をワンカットで捉えた冒頭のショットからして見事で、全編バッキバキにキマりまくった白黒の映像美が痺れるほど格好良い。
フィルムノワールに欠かせない雰囲気描写や小道具の活かし方も絶妙な塩梅、完璧な構図と陰影を強調した鋭い撮影には見惚れるより他はない。
人物相関図がやや複雑で分かり難く、集中して観て名前を覚えないと置いていかれるので要注意。
映像表現こそが映画の醍醐味だと確信しているので雑音になるような物語ならば無い方がマシだと思うが、本作のような男のロマンと哀愁漂う結末は奥深く忘れ難い余韻を残す。
映画をジャンル分けして観たり考えたりするのはだいぶ前にやめたが、フィルムノワールこそが自分の1番好きなジャンルかも知れない。
この激シブな世界観に堪らなく惹かれる。
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