半兵衛

オレゴン大森林/わが緑の大地の半兵衛のレビュー・感想・評価

4.5
主人公の一家の家訓として掲げられ、英語のタイトルでもある「Never give an inch」、この言葉が映画の重要なテーマになっている。

ストをおこなう労働組合の方針に逆らい、日曜日を除いた毎日を伐採作業に従事して契約した会社への納入を優先する主人公たちの頑固なまでの仕事への生きざまを通して、働くということは何かと問いかける労働映画の名作。彼らは決して労働への賛美はせず、ただひたすら仕事に一生懸命に立ち向かう。そこには有給や休暇をとることを優先する現代人が忘れた、生きること=仕事という誇り高き精神が感じられ、圧倒されてしまう。例え家族が死んでも、奥さんが出ていってもその生きざまを変えず仕事に向かう主人公の気骨さをポール・ニューマンが見事に体現する。

それ以外の役者の演技もそれぞれ見事で、仕事一筋に生きる頑固な父親のヘンリー・フォンダ、従兄弟で飄々としながらも仕事に真面目に向き合うリチャード・ジャッケル、ニューマンの腹違いの弟で一家に複雑な思いを抱いているマイケル・サラザンなど枚挙に暇がない。

セミドキュメンタリータッチで描かれる伐採作業の映像も力強く主人公の生きざまに説得力を与える、そして後半の大事故も怪我人や死人が出る様を臆することなく描く様も素晴らしい。特にリチャード・ジャッケルがニューマンの努力もむなしく溺死する姿は色んな意味で容赦がなく、そんな中でも最後までおどける彼の姿に泣いてしまった。

様々な苦難を経て、それでも仕事へ戻るラストの勇壮さに感銘を受ける。なんと言ってもぎくしゃくしていたニューマンとマイケルが手を取り合って共同で作業するのがグッと来る。

あと真面目な作風の中にユーモアを忘れない演出も最高、特に起床時間になっても起きないマイケルにヘンリー・フォンダが「リタ・ヘイワーズかよ」という例え突っ込みをするシーンは思わず吹いてしまった。
半兵衛

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