遊

PASSIONの遊のレビュー・感想・評価

PASSION(2008年製作の映画)
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「逃げ」「甘え」「見ないふり」「一旦保留」「思考停止」「それっぽい結論をつけて自分をいい感じに騙しておく」
見たくないものを必死に見ようとしている、頑張って見た気がしても「頑張って見た、ということにして本当はそこまで見てないけど満足する」になってないか必死に精査する、そうやってどんどん人生がゲシュタルト崩壊していく行いを、監督自身が映画製作を通しておこなっている そのさまをまざまざと見る
こうやって言ってる自分もそれっぽいことを言ってるだけで この映画をしっかり受け止めてイイ感じに自分の人生の豊かさとか誠意とかをプラスにしてる感を自分に対して出してるだけなんじゃないかという気になってくる

「本音を言い合いたい」っていうのがめちゃくちゃに甘えた発想な気もする しかも「ここから一時間は本音しか言っちゃいけない」なんて、度を超えた甘えが暴力になる でもこの映画は全てのコミュニケーション、他者との関わりがすなわち暴力たり得ることすらも示唆しているようにも思える

それなのにラスト、「甘え」と「甘やかし」が最後に残った人生の救済のような気さえしてくる 最近観たドライヤーの奇跡がオーバーラップされた というか多分ドライヤーの奇跡を想起する仕掛けが脚本にもあった 特殊な撮影も空撮もCGも一切なくしてここまで深遠なものを表現できる

占部房子に限りなくジュリエット・ビノシュを感じると思ってたら香川照之も言ってるらしい ていうかみんな絶対思うわ 

ロメールの 恋情を起点として哲学に踏み込む会話劇を(明らかに)カサヴェテスのやり方で映像にする、しかも日本の役者とそこらへんの東京で、その試みが完全に結実している あ〜頑張って言葉にした!
遊