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バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト デジタルリマスター版の遊のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

世界が無価値でFUCKなものだと思えていた間は、自分自身がどれだけ無価値でFUCKな人間であろうと構わなかった
無価値でFUCKな自分自身を正当化するために、世界そのものを無価値でFUCKだと思うことにしていた

きっとLTは、裁かれない罪や守られない正義をさんざん目にしてきて、何もかもどうでもよくなってしまっていたんだと思う。精神の拠りどころを失って、なににも頑張れなくなって、欲望のままにドラッグ・セックス・ギャンブルまみれの自堕落な生活を送る姿からは「自分からグレにいく中学生」に近いものを感じた。親への不満と不信がそのまま世界に対する絶望に置き換わってしまって、肥大化した自棄の感情からあえて酒やタバコや《よくないとされているもの》に自ら近寄っていく感じ。そして、中高生のそういう行動には(勝手に決めつけるけど)ヤケクソの底に「心配してほしい」「自分を見て、叱って、導いてほしい」という叫びが、正しさと清らかさを希求するひと握りの光みたいなものが埋もれていて、LTの魂の奥にもそれと同じものがあった。その小さな小さな光が、「自分を犯した男たちを赦すシスター」に出会って、無視できないほどの輝きを取り戻し始めてしまった、今まで自分が山盛り積み上げてきたヤケクソの糞をまばゆいくらいに照らし始めてしまった、その苦しみがあの長い長い慟哭になっている...ということで、どうでしょうか
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