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PASSIONのzkknのレビュー・感想・評価

PASSION(2008年製作の映画)
5.0
自分もその場に居合わせたような映画体験。濱口竜介はデビュー作から会話劇の迫力が素晴らしすぎる!スクリーンに釘付けだった。

他者との確かなつながりは、本音をさらけ出し、相手と共有し、両者がその面倒くささを乗り越えることでしか生まれない。その面倒くささから逃げないこと、それが人間関係におけるPASSIONかもしれない。20歳終盤に差し掛かる主人公たちと同じ年齢で、刺さりまくってしまった。

最後のシーンは、6年弱付き合った人と別れた自分を重ねてツラくなった。 10年間付き合った恋人へ「さよなら」と別れを告げて家を出たのに、10秒後には家に戻って「赦してくれ、もう一度チャンスをくれ」と懇願したシーン。胸に刺さる。もっと本音をさらけ出すべきだった、と後悔の念がある。

婚約相手のお母さんから「本当に結婚したいの?」「本当に選びましたか?」と問いかけるシーンも心を抉った。婚約相手の親に言われたら臓器が飛び出てしまう。親は子どもの反応を通じて婚約者のことをより理解できる節もあるのだろうな。

映画のハイライトであろう本音ゲーム。人間関係についてくる面倒くささに関して、占部房子役と岡本竜太役で受け止め方が決定的に違うなーと思ったセリフ。占部房子役「面倒くさい人が一番嫌い」。そう、人間関係は面倒くさい。でも面倒くさいの対象は相手ではきっとない。相手が面倒くさければ、関係を切ればいいだけ。それができないのは、本音と向き合い、さらけ出しが出来ない自分の弱さである。岡本竜太役は「セックスは気持ちいいだけでなく、付きまとう面倒くささがある」的な発言もしていた。こちらの方が僕の思う人間関係の面倒くささに近い。

人間関係に付きまとう面倒くささは2種類あると思った。①自分の本音に向き合う面倒くささ、②その本音を曝け出す面倒くささなんだと思う。

本音に向き合うことは、自分の感情に素直になって自分を大切にすることでもある。これが映画で言及されていた誠実さ・真さ、だと解釈。これだけでも結構苦しい取り組み。いつか向き合わなきゃと思いつつ、やり過ごしてしまうことが自分は多い。

本音を相手にさらけ出すのは、最悪の場合は友人にしろ恋人にしろ、これまで築いてきた関係性を断ち切られてしまう恐さがある。その恐さを自分が受け入れて、伝える勇気を持てると、相手との関係性がどう転ぶにせよ、誠意が伝わるってことか。

僕は恋人にしろ友人にしろ、心理的距離が離れる可能性のある行動をほとんど取らない。つまり本音をさらけだすことを避けがちだ。他者との確かなつながり=<親密な関係>を築きたいなら、あるいは既に親密な関係にある人を大切にしたいなら、それはナシだぞ!と教えられた気がする。
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