半兵衛

東京暗黒街・竹の家の半兵衛のレビュー・感想・評価

東京暗黒街・竹の家(1955年製作の映画)
3.5
シネマヴェーラ渋谷のフラー特集で本作を取り上げないことを知りレンタルで観賞。

日本の風俗を出鱈目に描いているとして公開当時は国辱映画扱いされていたらしいが、70年たった今となっては風俗が変化したこともあって一周回ってファンタジーみたいでありかなと。確かにありえない木造建築に日系人によるたどたどしい日本語、今でもそうはやらない礼儀作法など突っ込みどころはいくらでもあるけれど、監督が日本を愛していることがスクリーンから伝わってきて何故か嫌いになれない。それに戦後復興してきた日本の風景をカラーで撮った映像がいずれも貴重で、少なくとも本当のファンタジーである『三丁目の夕日』よりは親近感が湧いてくる。

そしてこんな際ものっぽい題材でも手を抜かず一級のアクション映画に仕上げるサミュエル・フラー監督の演出が最高で、密かにまぶされた同性愛のスパイスも効いて犯罪ノワールものとしても中々の出来映えに。肝心の主人公による身分を偽っての潜入捜査は大分緩いけれど。

黒沢清作品のような中盤の犯罪を終えて逃走する犯人グループを斜めから追いかけて撮ったり、パチンコ屋だと思ったら奥へ行くと犯罪者グループのアジトに変化するなど鮮烈なショットが随所で登場して飽きない。最後の浅草松屋にかつてあった大型遊具スカイクルーザーを使ったアクションもカッコいい、銃撃を終えると同時に遊具から降りるのも◎。

早川雪洲さんはちょくちょく刑事役として登場するがあまり活躍しない、そしてアメリカ暮らしが長いせいか日本語が滅茶苦茶たどたどしい。
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