半兵衛

果てなき船路の半兵衛のレビュー・感想・評価

果てなき船路(1940年製作の映画)
3.8
武器を運ぶことになった船で働く船乗りたちを通して、生きることは果てしなく働くことだと語っていく『蟹工船』のようなフォード流労働者映画。登場人物はみな豪胆で明るく、喧嘩や酒、女が好きな奴らばかりではあるがみな先の見えない職場の状況に焦りと空虚さを感じており、必死になって騒ぐ姿に生きるため労働している我々の姿がダブり切なくなる。

物語の大半が船の中なのに、フォード監督の工夫された演出により飽きが来ないのがさすが。特にアクション演出は普通の監督だったら延々とやりそうな喧嘩の場面を、船の上を走る船員と最小限の殴り合いと掴み合いだけでダイナミックで迫力のあるシーンに仕上げてしまう手腕はもはや魔術。あと海とセットの船を合成した特撮も違和感がなく、後半敵軍に襲撃を受ける場面で爆弾を投下される件などちょっとした風の演出をさりげなく付け加えて本当に爆撃を受けたような錯覚を与える演出も見事。

登場人物はみなキャラクターが濃い奴らばかりで彼らの掛け合いを見てるだけでも楽しい、ただ主役のフォードは比較的真面目なので今一つ影が薄いが終盤やっと目立つ(仲間に助けられるなどやや情けないが…)。そして台詞がほとんどないのにくっきーに似ているせいでやけに目立つ船員のインパクトが凄い。

落ちた新聞の記事とその行方、登場人物にかかる陰で締め括られるラストも◎。
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