Koshii

スタンド・バイ・ミーのKoshiiのレビュー・感想・評価

スタンド・バイ・ミー(1986年製作の映画)
4.1
夏の日の死体探し。幼かったあの頃の自分は、果たして少年だったのだろうか。
現在から振り返ると、それは紛れもない事実であるのだが、、

みんなとバカな事をして楽しんだり、子供ながらに変な気遣いをしてみたり、そんな自分を周囲と比べて、甲斐性もなく大人びて感じてみたり。そんなとこをまるっとふくめて少年時代だったのだろう。

以下、ネタバレを含みます。












往々にして、子供にとっての冒険はファンタジーではない。現実の少しばかりの延長でしかないことに最終的に気が付く。単なる好奇心と、大人への憧れが、向こう側を幻想的に見せる。そこに飛び移りたいという気持ちこそが、大人になると鈍くなってしまう感覚なのだろう。

本作で登場する拳銃は、彼らを物理的に大人に近づけるアイテムとして登場し、実際に拳銃を取り出さない場面でも、存在感は大きかった。物語にはたくさんの危険が描かれており、その脚色は少なからずあるとしても、拳銃と死体の存在は本物だったはずだ。
そんな、非日常的で刺激に溢れた二日間であったにも関わらず、「何か」が起こるまではこの冒険を明確に思い出す事はなかった。友人の死によって、それまではすっかり埃をかぶり、閉じ込めたままだった素敵な思い出に光があたる。

きっと本作を鑑賞すると、それ自体が引き金となり、素敵な12歳エピソードがこのフィルマークスにレビューとして綴りたくなるはずだ。そして、あの頃の友人は元気にしてるのだろうかと、物思いに耽る。

当の本人は、本作に登場した4人の中だとゴーディに近かった気がする。大人びている風を装って臆病さを隠している少年。周りから良い子ちゃんに写っていることに納得がいっていない少年。そんな記憶を思い出させてくれる素敵な作品だった。

こうして少年時代を思い出した今日という日もまた、未来の自分が蓋を開けてくれることを願って。
Koshii

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