作品としての出来栄えとか、世の中の評価と関係なく自分にとって特別な映画というものが誰にでもある。
これまで歩んできた人生や、今置かれている状況と映画がリンクして、自分の中で奇跡的な作品として心に刻まれる。
「スタンド・バイ・ミー」は自分の中で、そんな特別な思い入れのある一本だ。
原作も読んだが、映画の方が何倍もいい。
モダンホラーの帝王として有名なスティーブン・キングの原作は、小さな町から出たこともない少年たちが「ザ・ボディ」つまり「その死体」を探しにいく旅を描いている。
だが、ご存知の通りこの作品はホラーとはかけ離れたシナリオとなっている。
監督のロブ・ライナーはこの映画から原作のホラー性を完全に排除した。
この大胆な脚色により、本作は数多のキング原作のホラー映画と一線を画する、永遠の青春映画となった。
更に最初のベースラインを聞いただけで、この映画を思い浮かべるBen E. Kingのあまりにも有名な楽曲をタイトルとし、キングの「ザ・ボディ」はロブ・ライナーの「スタンド・バイ・ミー」へと生まれ変わった。
この映画を見ると少年時代を思い出し、自分と重ね合わせてしまう。
決して死体探しの冒険に出た訳ではない。
だがあの12歳の日々が、昨日のことのように思い起こされる。
最初に劇場で見た後も、何度も何度も繰り返し見ているので、字幕なしでもセリフが出てくる。
脚本、演出、音楽、キャスト、タイトル、セリフ、何もかも完璧。
自分にとって永遠に愛することの出来る映画である。