かなり宗教的ではありながら、同時に人間を捉える慧眼。
徹底的な長回し。
信仰心をありありと映し出す。
父の敬虔さは一貫しつつも、そこに長男や仕立て屋の宗教観が衝突し、ある種皮肉的なリアリズムも感じる。
その上でヨハンネスの描き方が見事。
彼を映すカメラワーク、純真たる子供との接触など演出の妙に唸る。
アンタッチャブルな存在としての神とそれに結びつく人間の運命。
人間が抗せないものとしてあるはずの自然の摂理の超越。
当然としてきた概念が崩壊することによるカタルシスは筆舌に尽くし難い。
一歩間違えればしつこいまでありうる、全体を引き伸ばしてのラストシーンは目を見張るものがある。
展開は読み易いながら、全体としては寓話的にも説話的も振れすぎないバランス感覚。
軽くなりかねない死の扱い方を決して間違えずに説得力が生まれる構成に仕上げている。