nowstick

奇跡のnowstickのレビュー・感想・評価

奇跡(1954年製作の映画)
3.5
良くも悪くも、カールドライヤー映画の特徴が大きく出ている作品だった。

良いところは、「ミカエル」とも「裁かるるジャンヌ」とも「吸血鬼」とも全然違うカメラワークが用いられている点だ。カールドライヤーは毎回、全然違う映像表現に挑戦していて、本作では舞台みたいな長回しの室内劇と、野原の丘の上に立つ主人公たちの絵が、とても見応えがあった。

悪い点と言って良いのか?はよく分からないが、この映画のテーマは他のドライヤー作品と同様に、西洋の内輪ノリだと思ってしまった。特にラストの部分とかは、あれを東洋の映画監督が東洋思想でやったら、完全にキワモノ映画の扱いを受けるだろう。キワモノ映画ならキワモノ映画の面白さがあるが、本作みたいにそれを大真面目に芸術映画としてやられると、どう見たら良いのかは分からない。
ただ、これに関しては、もう自分がズレてるのか?何なのか?は、よく分からなくなって来ている。よって、キリスト教関連の思想をもう少し調べて、この作品が意図してるようなテーマについて、もっと考える必要があるのだろう。

どちらにせよドライヤー作品は、自分が最初に見た、同監督の初監督作品である「ミカエル」が最も普遍性があって、最も好みだった。それ以降はどんどん思想が入り組んで行って、それが足枷となり、どんどんストーリー展開において身動きが取れないような作品が増えて行った。
何を正解とするかによって、それぞれの作品の評価は変わるだろうが、自分が出した、こういった「ドライヤー映画の傾向」についての結論は、そんなに間違っては無いと思う。
nowstick

nowstick