新納ゆかい

橋の新納ゆかいのレビュー・感想・評価

(1959年製作の映画)
4.5
インターネット上の一部で、過激な愛国心がひどくもて囃されている。とりわけ高校生くらいの子供が教科書では知らなかった太平洋戦争の概要を知っては「日本は本当はすごい国」だの「戦争は間違っていなかった」だのといきり立つわけで、自分も高校生の頃はそんなフシがあった(笑)
若者の愛国心や一本気に信じる妙な意地というものは、いつの時代もそう変わるものではないのだろう。

「橋」は主人公の少年たちの子供ゆえの純粋な愛国心の行く末を描いた、ドイツ戦争映画でも屈指の名作だ。
英雄物語を夢見て戦場に立てば、たかだかドングリくらいの大きさの鉛の弾で八つ裂きにされてしまうのである。英雄になど誰もなれない。そもそも戦争の流れにはなんら関われない。失望と、恐怖と、そこから生まれ出る仲間を守る気持ち。この戦場での仲間意識をやたらと礼賛する輩もいるが、これは自分が守れそうなものはせいぜい隣にいる人間くらいなんだという絶望に落とされてから発揮されるものなのだ。

この映画は、「西部戦線異状なし」と併せて観てほしい。
人類は二度も同じような映画を作らなければ、自らの愚かな行いに気がつくことができなかったのである。
新納ゆかい

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