MasaichiYaguchi

エレファント・マンのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

エレファント・マン(1980年製作の映画)
4.0
40年前に初めて本作を鑑賞して抱いた思いと、ウィズコロナ下、益々排他主義による分断が広がっている今観て抱いた思いはやはり違う。
19世紀末のロンドンを舞台に、実在した奇形の青年ジョン・メリックの波瀾万丈な人生を描いたデビッド・リンチの代表作にして名作は、40年の歳月を経ても古びないし、もたらす感動も変わらない。
見世物小屋で「エレファント・マン」として劣悪な環境で暮らしていたメリックが、その特異な容姿に興味を持った外科医のトリーヴスと出会ったことによる“化学変化”、本作はこの“化学変化”を通して善悪、美醜という価値判断を我々に問うていく。
初めてエレファント・マンの素顔を見た時にゾッとしたことを、この4K修復版を観て改めて思い出したが、それでもストーリーの進展と共に彼の瞳に宿る優しさや純粋さに気付き、その印象は変わる。
そしてエレファント・マンの“真の姿”に気付いた我々同様に、初めは研究対象として“見世物”扱いしていたトリーヴスが葛藤の末に変わっていく姿に改めて胸に熱いものが込み上げてくる。
このトリーヴスを演じたアンソニー・ホプキンスは流石としか言い様がないが、特殊メイクを施されて表情が限られている中、エレファント・マンを“体現”してみせたジョン・ハートの演技は映画史に残るものだと思う。
そして“浄化”と言っていいラストシーンがいつまでも心に残ります。