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パンズ・ラビリンスのASKのネタバレレビュー・内容・結末

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

とても珍しい映画だ。この映画は大人しか楽しめないファンタジー。
ファンタジーというべきか迷うくらい実にシビアな物語だ。でもすごく引き込まれ、楽しめた。

「妖精」「魔法の国」「王女」「3つの試練」これだけ聞くと思いっきりファンタジーなのにリアリティがあるのだ。特に人物描写がリアルで恐ろしい。戦時下の人々の感じる不安、怒り、敵対心、残忍性、見事なまでの描写だ。

このリアルさのおかげで物語がすごく引き締まる。そして飽きさせない。
ファンタジーが進行するストーリー、現実世界の紛争が進行するストーリーを交互に見せることによって「あっちはどうなった!?こっちはどうなる!?」と物語に引き込まれる。この二つがリンクするところも面白い。現実世界に無理なくファンタジーを盛り込むのはとても難しいはずだが、たとえばマンドラゴラのくだりなど、妙なリアリティーがある。

それにしても、2つ目の試練は特に恐ろしかった。なんだあの化け物!!あの動き、あの音、背筋がゾクゾクきた。妖精を普通に食ってるし、手が目になるところも気持ち悪さ倍増。思わず目をそむけたくなるほどだった。

この化け物も含め映像はすごくキレイだ。森には何か白い胞子のようなものが飛び交い幻想的で、これがファンタジー感を醸し出す。全体的に薄暗いシーンが多いが、フィルムの色のおかげか、キレイな濃紺(青緑に近い)で観やすかった。暗い映像の効果もあって森の緑や、ラストの黄金の世界がよりキレイに見えたのかもしれない。

ラストはいろいろな解釈ができると思うが、人間という器から開放されたのだろうと解釈した。

この映画は独裁社会に対する批判がもちろん感じられるが、試練1つ1つがメッセージ性を持っているのだと思う。
 1、やり遂げる勇気
 2、約束を守ること、信頼。
 3、自己犠牲の精神

これは現実世界の紛争においても重要な要素だ。
だからこそこの2つの同時進行が生きるのだろう。

と、勝手な解釈をしてニヤリとする。完全なる主観でも、振り返って、深く意味を探ろうとすると、映画をより楽しめる。やっぱレビューって大切だなぁ。
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