TaiRa

恋のエチュードのTaiRaのレビュー・感想・評価

恋のエチュード(1971年製作の映画)
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『突然炎のごとく』の原作者アンリ=ピエール・ロシェの小説『二人の英国女性と大陸』を映画化。74歳で小説家になったロシェはこの2作しか発表してない。

何よりも凄いのはネストール・アルメンドロスの撮影。パリの街もウェールズの海辺の家(撮影場所はノルマンディーだとか)もとにかく美しい。20世紀初頭の英国女性たちの衣装もエレガント。美しい自然と併せてモネの絵の様な画面。暗い室内でロウソクの灯りが人物の顔を照らす様はトリュフォーのこだわりが滲む。お話はフランス人のお坊ちゃんがイギリス人女性の姉妹とそれぞれ恋に落ちる数年間を描いた文芸ラブロマンス。ただし美しい恋物語という訳でもない。ある意味ではドライで虚しい恋愛。妹に恋した男は結婚を望むが親の反対に遭い、条件として一年間離れて過ごす事になる。一年後の再会まで恋情を募らせる妹に対して男は割と早い段階で飽きる。悲しみに暮れる妹が画面に向かって朗々と語りかける演出も面白い。数年後には姉の方とパリで再会し恋愛関係になる。スイスへ旅行した2人がベッドを共にするまでの流れも少し変。シーツで作る仕切りは『或る夜の出来事』オマージュか。変な下着履いてるっていうネタが特に意味なくて笑える。帰りの際、目的地の違う2人がそれぞれボートに乗って別れる画が良い。その後には再び妹と接近する。妹を抱く場面で初めてまともにセックスが描かれる。溜めに溜めただけあってエモーショナル。トリュフォーがロシェの本に惹かれたのは、彼も同様に「人を愛せない」人だからなんだろうと思う。
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