Omizu

コーリャ愛のプラハのOmizuのレビュー・感想・評価

コーリャ愛のプラハ(1996年製作の映画)
3.5
【第69回アカデミー賞 外国語映画賞受賞】
DVDの新装版が出たので買ってしまった。第9回東京国際映画祭グランプリ作品でもある。監督ヤン・スヴェラークの実父でありチェコを代表する俳優ズデニェク・スヴェラークが主演をつとめた。

かつて名のあるチェロ奏者だった男が(おそらく)ロシアの侵攻により地位を追われ、葬式の演奏くらいしか仕事がなく貧しくなっている中、チェコ国籍が欲しい若いロシア人女性との偽装結婚を持ちかけられ…という話。

背景には1989年、チェコスロヴァキアで共産党体制が崩壊するビロード革命がある。そして最後に広場でのコンサートシーンがあるが、あれは本当にあったことだという。当時の記録映像も一部使われ、ビロード革命の目撃者となったような感覚にさせられる。

ロシア人とチェコ人であんな簡単にコミュニケーションとれるのか?と思ったんだけど、ロシア語とチェコ語はかなり近似した関係にある言語らしい。ただ意味が異なる単語もあり、例えばコーリャがソ連の国旗を指して「僕の国旗は赤い」というのに対し、チェコ語では「赤い」という単語は「美しい」という意味になるらしく、反ロシア的感情を抱いているロウカは「美しいわけないだろ」と返す。日本語ではそこが伝わらないので解説読んで初めて知った。

すごく端正で思ったより個人的な話ではあった。とにかくコーリャ役の子がカワイイ。疑似家族ものってジャンルとしてあると思うけど(『万引き家族』とか)、そこのツボをしっかり押さえつつ細やかなユーモアも交えている。

ただ、逆に言うとあんまり特徴がなく掴みどころがない映画のように感じた。政治的背景を知らないと深く感じ入ることはできないのではないかな。ま、良くも悪くもフツーの作品。
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