垂直落下式サミング

蛇鶴八拳の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

蛇鶴八拳(1977年製作の映画)
4.3
おかっぱなジャッキー・チェンの真面目な演武から始まる。槍術の舞を一通りやりおえると、剣とトンファーに持ちかえて2対1の立ち回り。そこにナレーションが重なって、本作のストーリーを説明しはじめる。
各々の研鑽のために、一堂に会した八つの流派の師範たち。彼らは、各流派の極意をあつめて新しい最強武術「蛇鶴八拳」を考案した。これを修めるものは、武林の権力を握ることができるという。しかし、ある日こつぜんと師範たちが姿を消したことで、各門徒たちによる血で血を洗う「蛇鶴八拳」の秘伝書の争奪戦が幕を開けたのであった!ババーン!
秘伝書を持って旅をする三つ編みジャッキーのもとに、次々と刺客がやってくる!強いやつと戦いたいとか、師匠の仇とか、そういうんじゃなくて政治的な争いが絡んでくるのが、チョット難しい。
若いジャッキーが中華料理屋でゴハンを食べてると、お前に食わせるタンメンはねえ!の人が出てきそうで(元ネタはたぶん酔拳)身構えてしまうけど、まじめジャッキーなので顔芸とかは少なめ。ケンカがはじまると、店の店主が不安そうな顔で見つめているが、他の作品の比べると壊しっぷりはおとなしい。
個性的なキャラクターたちの多彩な功夫の技を堪能できる点においても、魅力的な作品。我らがジャッキーの繰り出すスピーディーな動きの蛇鶴八拳をはじめ、棍棒術の女、木鞭使いのじじい、女暗殺拳、剣の達人、鉄拳のおじさん、バカのおじさん、編み笠三連星、頭突きの悪党、刺客達が次々とやってくる。
道中めぐりあう敵かな?味方かな?の友情があり裏切りがあり、八つの門派同士の争いがありつつ、同行する低身長女と名門のお嬢さんの女の戦いがありつつ、いろんな事態が横並びになりながら、慣れないニヒルキャラを演じるジャッキーの素性が明らかになって、彼の目的が見えてくる。
なかなか本音を見せないが、師匠の想いを背負い、武林を正しき道へ導くために忸怩たる思いを胸に秘めた青年だった。偉い!
さらに、高潔な魂が主人公ではない脇役にまで宿っているのが清い。途中から同行するバカのおじさんは、襲われている人たちを見過ごせない。その鍛えた拳は、私利私欲のために使うことを禁ずる。功夫の教えを守る義の人。おじさんがジャッキーの制止を振り切って、戦いの先陣をきる姿に涙。
諍いは忘れて、困ってる弱い人のために、みんなで頑張って悪いやつと戦う。それが強い人の責務だと…。これが、正義だ。武侠ものとして破格のエンタメ性。ジャッキー香港時代の名作のひとつでしょう。
蛇鶴八拳。タイトルは「だかくはっけん」だと思ってたけど、「じゃかくはっけん」と読むらしい。「じゃ」なのかあ~。中国語しゃべれるわけじゃないけど、地の文で書くときは、どちらかというと日本人の口から出したときにも本場の発音に聴こえんこともないほうに寄せたい。カンフーのこともクンフーって言いたいっ。形から入る派なのでっ。