まさなつ

水俣 患者さんとその世界のまさなつのレビュー・感想・評価

水俣 患者さんとその世界(1971年製作の映画)
4.1
小学生の教科書にも載っている四大公害病の一つ。病名に地域名を入れたのは大きな誤ちだと思う。そこに住む人々はいつまでも偏見に苦しめられる、、、。

原一男監督は、10年以上前から水俣病のドキュメンタリーを撮影しているそうですが、もっと以前に何作も水俣病を撮り続けた監督がいました。

土本典昭監督。

彼が映画として最初に水俣病に取り組んだ作品。

1969年、チッソを相手に裁判を起こした水俣病患者家庭29世帯を中心に潜在患者の発掘の過程、チッソの株主総会に患者や支援者が出席して混乱するとこまでを描いています。

映画は、鹿児島県出水市の漁師の描写と亡き父の回想からはじまる。
「魚が売れなくなるから隠しぬいてくれ、代りに市が“死”を買いとるから」、、なんとも本質をついた哀しい言葉。

その後は、水俣病患者を一人一人映しだしていきます。症状は様々。狂人のように荒れ狂う人もいる。胎児性の子供たちは、母親のお腹にいる時に影響受けて、生まれながらに手足や、場合によっては脳にまで障害を持っている。観ていて当然いたたまれないのですが、カメラは誇張なく彼らに寄り添うように日常をありのままに映す。そこには悲惨な姿ばかりではなく、何かをやろうと必死になっり、好きな音楽を聴いたり、笑ったり、遊んでり、食べたりが映され、それはまさに人間ドキュメントになっているから、見入ってしまう。

終盤の株主総会の熱量には圧倒されます。混乱の中にあって、他人事のようなチッソの社長の顔がいろんな事を代弁しているようで印象的です。

今年の春に、友人が水俣に住んでいるので遊びに行きました。海も山も近く、温泉も沢山ある。美味しい名物もあるけど、決して観光地にはなれない。チッソは社名を変えて、今も市の中心部に広大な工場がある、企業城下町。経済的に占める割合が高く、そこで働く人も多い。石綿や原発も同じ構造。だから問題は複雑。患者認定の問題は60年以上たっても未だに解決していないらしい。なんとも現実は厳しいのです。

原一男監督には、ぜひ完成してほしいです。
まさなつ

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