ぽんぽこ

秋津温泉のぽんぽこのレビュー・感想・評価

秋津温泉(1962年製作の映画)
4.0
吉田喜重監督。
岡田茉莉子のお父様が最近観た『その夜の妻』の岡田時彦と知りました。
岡田茉莉子と言えば、小津安二郎の映画のどちからと言えば脇役のイメージでした。


昭和20年の夏、岡山県の山奥秋津温泉が舞台です。
東京の学生である河本周作(長門裕之)は結核に冒され叔母を頼り秋津温泉までやってきます。
生きる希望を失っていたところに、秋津荘の娘、新子(岡田茉莉子)に出会い溌剌とした新子に惹かれはじめるのでした。
長門裕之が桑田佳祐に見えてきました。
それから三年後、周作は文学仲間と飲み歩き荒んだ生活の時に再び秋津温泉を訪れて、新子に心中自殺を持ちかけるものの、新子に笑い飛ばされてしまうのでした。
それから周作は結婚し、女中から周作が秋津に来た知らせを聞いた新子が嬉しさのあまりに雪の中を待ち遠しいので、雪下駄を脱ぎ足袋で走って行く様が新子の気持ちが手に取るようです。
四季の移り変わりが美しかったです。
あんなに雪深かったのに、春には桜が咲き乱れ、花びら舞い散る景色は絵になります。
それからの周作は都会の色に染まっていき、売り子の芳村真理と遊んでいたりして、チャラくなっています。
もはや、昔死にたいと言っていた頃とは別人の様になってしまった周作。
そんな周作だけど、ずっと好きでたまらない一途な新子。
あんなに朗らかだったのに、最初と逆転しています。
秋津荘も売り払って母親も死んで風光明媚な自然がかえって都会と違って紛らわしてくれるものもなく、哀しく映りました。

思い詰めた新子はラスト寂しく終わりました。

岡田茉莉子が、一番美しい時。
輝いていました。
ぽんぽこ

ぽんぽこ