ヒロ

秋津温泉のヒロのレビュー・感想・評価

秋津温泉(1962年製作の映画)
3.6
生粋のえなり顔こと長門裕之と橋本マナミの上位互換こと岡田茉莉子による戦争が齎した足掛け17年の悲恋モノにして、吉田喜重の公私混同メロドラマ。多分にやりたかったのは成瀬であり『浮雲』と『杏っ子』を足して2で割ったような作品だったのだが、この映画は全体を通して平衡というか釣り合いが取れていないように思った。まず第一に長門裕之に告ぐ、どのツラ下げて岡田茉莉子誑かしとんねん鏡で顔拝んでからにしろ問題。いいか、あれが出来るのは顔面偏差値63からだ。ひとつ、ルックスと行動の不均衡。次いで第二、メロ過多問題。重厚なメロにドラマが少々押され気味、両者ががっぷり四つに組んでこそのメロドラマ。ふたつ、メロとドラマの不均衡。そして第三、この映画にその詩は重いでしょうに案件。作・干武陵、訳・井伏鱒二「・・・花に嵐のたとえもあるさ さよならだけが人生だ」諸行無常、移ろいゆくこの世において真なるものは死ぬことのみ。という有名な詩の引用はちょっと辛かったな。みっつ、作品当たり負け。でもしかし、林光の重厚な音楽に乗せて成島東一郎の移動撮影が映す悲哀に満ちた岡田茉莉子、そして杉原よ志さんの滑らかな繋ぎ。これぞ松竹ヌーヴェルヴァーグ。なにより人生に対する諦め宿した独り身女のゆきずり地獄愛って設定がいい。なんか惜しい、というか勿体無い。長門裕之が全部悪い、あいつはバカヤロウ©︎豚と軍艦。
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