こっ酷い偏見まみれの差別的なジョークと、その差別的なジョークをジョークとわからず真に受けてしまう差別的な人間の両方に対して笑うという矛盾した(?)態度を要求される作品。前者は(その酷さを感じながらも)笑えたのだが、後者に関しては個人的には笑い事ではないと感じるのであまり笑えなかった。期待されている笑いの半分しか享受できなかったのは残念。
「半分」といってもウエイトはどちらかと言えば前者に置かれている印象を受ける。本当に伝えたいことは、ボラットがユダヤ人や女性に対して持っている偏見と同じくらい酷い偏見を我々も「ガイジン」に対して持ち得る(あるいは持っている)ということなのだろうが、そのメッセージはボラットというキャラクターのインパクトの強さに埋もれてしまっている。
「イギリス人俳優が偏見に基づいたカザフスタン人を演じて、何も知らない一般のアメリカ白人を騙し、彼らが内に秘めている差別的な態度を浮き彫りにする映画」というコンテキストが与えられてはじめて活きてくる映画なのだが、本編中に全く説明がないところがやや不親切かなとは思う。(というと賢い人に馬鹿にされそうだが……)
あまりにタブーすぎるからか、「人種偏見」のテーマに深く切り込んだ風刺映画はほとんど知らない。(『チーム★アメリカ』と『アイアンスカイ』の中の一要素であったな、というぐらい)
もっと扱われるべきテーマだし、こういう映画はもっと増えて欲しいと思う。
偽国歌「オー・カザフスタン」はとにかく耳に残る。延々脳内再生してる。