竜平

籠の中の乙女の竜平のレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.6
平穏だけど何かおかしい、とある家族のヘンテコ物語。ギリシャ産のファミリードラマ的スリラー映画。

『ロブスター』『聖なる鹿殺し』のヨルゴス・ランティモスの初期作品及び出世作ということで興味を持って、とくに前情報も入れずに鑑賞。なんだけど個人的には序盤、内容を掴むのにちょい苦戦してしまったもんで少しだけ書いとこうかなと。この何やら裕福な家族の両親、とくに父親がなんか変な人っぽくて、何が変かと言うと息子一人と娘二人、計三人の我が子を家の敷地内から一歩も出さずに、また外の世界からの干渉や影響を受けないよう教育しつつ暮らしてる、という。外からの情報を最小限に抑えつつ、この一家独自のヘンテコ勉強やらヘンテコ常識やらが序盤から見える。たまに両親が自作自演で起こす出来事がなんともシュール。子供たちは見るからに年頃で、父親は長男のために「女性」を外の世界から連れてくるわけだけど、そこらへんから伝わってきてしまう「性」や「暴力」に関するものが徐々に彼らの日常へと介入していって、平穏も乱れていく。子は無知だけならまだしも明らかに間違ったものの見方やら非人道的な行動やらあるもんで、どんどんカオスなことに。しかし全編通して淡々としてるもんで、これがまた狂気じみてるというか。とまぁこんな感じの前情報ありきで見ることで、どうなってしまうのか、何が待ち受けるのか、その興味でスルッと見れるはず。

とにかく静かな映画で、セリフはあれど説明はあまりなく、想像力や集中力も必要になってくるかなと。描き切らないラストまで、独特な空気感がずっと続く。ヨルゴス・ランティモス作品としてはこの頃からこの雰囲気、作風、不条理系の設定などがあって、要するにもう得意分野なんだなと。変な世界に触れたい気分の時に試してみては。猫ちゃん殺傷シーンにだけ注意。
竜平

竜平