垂直落下式サミング

ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎狂騒曲の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
「気張りすぎてクソ漏らすなや!」

二十歳そこらのシャバ僧のころ、芸人さんの深夜ラジオをよく聴いていた。そこでスゴくガラの悪い言葉が出てくることが多々あって、言葉の持つポテンシャル以上にアシスタントの人たちのウケがあるのが不思議だったんだけれど、なるほどビーバップ用語だったのか!元ネタに、十年越しくらいでようやく追いつけているのが、伏線回収みたいで感慨深い。
『ビー・バップ・ハイスクール』は、80年代を代表する漫画作品であるから、もうちょっとはやくチェックしとくべきだった。年代の人たちにとっては一般教養レベルのヒット作だもんな。原作ほんと面白い。
劇場版に関しては、静岡や愛知でもロケしてるしで、なんとなく知ってる町の昔の風情が撮されているから、僕にとっては親しみやすいモノだった。
今回のおはなしは、ヒロシが偶然知り合った女子大生といたところに、城東工業退学組の柴田&西が絡んできたことから、ヒロシ・トオルと柴田・西の抗争に発展するというもの。
人気キャラの柴田と西が登場する他、美人女子大生に柏原芳恵、ツッパリ女子中学生に少女隊と、華やかな豪華キャストをそろえて爆笑狂乱大暴れ。
前作からの真ヒロイン(みぽりん)不在の反動か、ヤりたい!吸いたい!しゃぶりたい!ツッパリたちのオスとしての本能に忠実すぎる日常にフォーカスをあてた一編となっている。
ビーバップは、まるっきり血と暴力の不良の世界ってよりも、現実と地続きっぽさを残しつつ、クスリとさせるユーモラスさを持ち併せているのがいいところなのだが、本作はちょっと耐用年数過ぎた感じ。
下半身の言いなりに女の柔い穴を追いかけて、横から取られそうになったら脊髄反射で吠えかかる。ヤンキー男子の猿としての生態が、よく映し出されているとも言えなくはないが…。
さすがに、少女隊のところは苦笑い。ダブリの不良が中学生の乳を吸う吸わねえと躍起になるのはキショロリコン。牛の風船にしがみつくところなどもセンス悪くて、どうしちゃったのかなと心配になる。
トオルが、新しくクラスを受け持つことになった頑固な先生と対立して、あわや退学となるエピソードがお気に入り。
最初は横暴にみえるけど、先生の言ってることは超正しい。勉強したほうがいいし、退学しないほうがいいし、軽はずみにヤクザなんかなるもんじゃない。このままバカやってると、本当に人生に敗北しちゃう。
カタギの女には相手にされないし、マトモな就職先なんてあるわけない。暴力的な青春をおくっていると、後になって取り返しがつかない。ツッパリたちにとって耳の痛い現実を深掘りしている。
そんなエピソードで、ド底辺な城東工業高校を退学したうえ、地元でプラプラして絶賛人生に敗北中な柴田と西が敵として登場するのは必然か。
西の狂犬っぷりが好き。交通事故で骨折したヒロシの足を、ゴルフクラブのフルスイングでさらに破壊する。テルのようなファンタジックな存在ではなくて、ガチで関わりたくない町のDQNとしてのツッパリ!
トオルに、ヒロシを助けたくば女のスカートを剥ぎ取りに行けと強要するピソードは、『走れメロス』が下敷きなのか…。陰湿ですね。馬も変。みるにたえないラストバトルは、ちょっとね…。シリーズものの宿命ともいえるマンネリとネタ切れを感じる一本。