櫻イミト

誓いの休暇の櫻イミトのレビュー・感想・評価

誓いの休暇(1959年製作の映画)
4.0
国際的に高い評価を受けたソ連のヒューマン・ドラマ。

戦場で思わぬ手柄をたてた青年兵士は6日間の休暇を貰った。彼は遠い故郷へ母の顔を見に帰ろうと列車に乗る。しかし旅の途中、困っている人を見ると捨てておけない彼は、貴重な時間を割いて人助けをし様々な境遇の人々と触れっていく。。。

純粋な青年の数日間のドラマを、優れた映像でスケッチした感動作。冒頭に、この映画は戦死した青年が元気だった頃の物語と述べられる。さぞかし可哀そうな話だろうと身構えるが、決してそんなことは無く、優しく快活な青年の人情ロードムービーだった。軸として描かれるのは列車で出会った娘との交流。旅を通して芽生えていく淡い恋心を、流れる車窓を重ねながら美しく描き出していて、心が洗われるようだった。

後半、青年が列車で乗り合わせた家族は、ウクライナからの避難民だった。その列車は爆撃を受け惨事となるのだが、否応なく現在進行中の戦争と重なって見えた。現在こうしている瞬間にも、本作で描かれていたような人々が犠牲になっているのだと、まざまざと考えてしまった。

善良な青年を生き生きと描くことで平和への願いをしみじみと伝える、ヒューマンドラマの佳作。
櫻イミト

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