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誓いの休暇のSNHRのネタバレレビュー・内容・結末

誓いの休暇(1959年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

素晴らしい映画だった。
前線で手柄を立て、母に会うために6日間の休暇を貰った主人公アリョーシャ(アレクセイ)。急げば1日で帰ってこられる道だそうだが、戦時中ということもあり、すぐには帰れない。その中で出会う多くの人々とアリョーシャの交流を見ているうちに、主人公のアリョーシャではなく、冒頭に台詞もなく僅かに出てきただけの母親の方に感情移入をしてしまう。
母の待つ家へと帰る道を征く、この心優しく、誰からも好かれるような青年を見守るうちに、いつの間にやら村へと続く一本の道で息子を待つ母の姿と自分の心境が重なってしまうのだ。冒頭から明らかにされる主人公の死が、観る者にアリョーシャを襲う焦燥を感じさせ、また、息子に会いたい(会わせたい)母親の感情を呼び起こさせることに成功している。素晴らしい構成である。
1時間半の中にたくさんの人生が詰まっており、心暖まるシーンもある。しかし、その人生を構成する人情や友情、恋心でさえ戦争は意味もなく奪ってしまうのだということをこの映画は静かに教えてくれる。
これから先の人生で数年に一度でも、このような素晴らしい映画に出会えることがあるならば、それほど嬉しいことは無いと思わせるような作品だった。
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