菩薩

誓いの休暇の菩薩のレビュー・感想・評価

誓いの休暇(1959年製作の映画)
4.5
その道で、今日も母は息子の帰りを待つ、二度とは還らぬ息子の帰りを、あの日の続きをしたいが為に。家に帰りたい、帰って母を抱き締め、屋根を直し、穏やかな日々を過ごしたい、そんな当たり前の願望を、戦争は無残にも打ち砕いて行く。優しい人になりなさい、親はこう言い子供を育てるだろう。だがそれを実践しつつ、成長出来る人間がどれほどいるか、人はどうして当たり前の優しさを忘れてしまうのか。戦争で「英雄」と賞賛される者は人をよく殺せる人物であろう、それがひいては戦争を早く終わらし、一人でも多くの味方を救う事になるから。だがそもそも戦争さえ無ければ、そんな「英雄」を誕生させる必要も無い、真の「英雄」とは、戦争をさせない人物こそをさし、親が子を思い、また子が親を思う当たり前の「優しさ」こそが、戦争を止める唯一の手段であると、チュフライはこの作品を通して訴えようとしていると感じた。『君達のことは忘れない』とは表裏一体の姉妹作、戦争と母、母と息子の物語であり、どちらも根底にはやはり「戦争さえ無ければ」との、強い憤りを感じる。素直で優しい青年だからこそ、踏み出してしまった回り道、その回り道の先が故郷に通ずる事は、もう無い。
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