〈Go To 仏映画史に残る愛しきバカンス〉
トリュフォーをして「これを描くためにヌーヴェルヴァーグは存在しなければならなかった」と言わしめた作品。そう、まさしくこれこそが私が一番観たかったヌーヴェルヴァーグ作品である。3時間近く女子たちのバカンスを見せられるだけなのにめちゃくちゃ面白いのだから、これはもう凄い。そのような内容でありながら、本作は映画とはどのようなものであるべきなのかを真剣に考えさせられる偉大なる契機でもあった。なんたることか。
ところで、あるシンガーが「フランス映画みたいな」と歌うとき、それはどの作品を指しているのだろうか。その答えは永遠に分かるはずもないが、少なくとも自分にとっての"フランス映画"を考えたとき、本作を思い出さないわけにはいかないだろう。
本作はまた、シネフィル御用達のレア作品としても知られている(ちなみに自分は決してシネフィルではない)。これほどの素晴らしい作品に容易にアクセス出来ないのは残念であるが、いわばこの"知る人ぞ知る名作"という肩書きというのは憎めないものである。滅多にない機会ではあるだろうが、是非とも劇場で鑑賞してみたいものだ。
終盤の切なさは、旅をしたことがある人間なら誰しもが分かるものであろう。あの言葉に出来ない感情を映画という装置で喚起させることに成功しているというだけでも、本作はまさに文化遺産級である。素晴らしい作品であった。