社会派の芸術映画だと知らずに見始めたので、最初のうちはサスペンス映画かと思ってワクワクしていた。
主人公家族たちが盗撮されたビデオテープを観る場面が何度も登場し、撮影する側と撮影される側の関係性を否応なく意識させる。
サスペンス映画を観るとき、スクリーンの前の観客は「真犯人を突き止めるストーリーを描く映像を見ている」と思い込まされている。いや、思い込みたいと言っても良いかもしれない。
真犯人が明らかになって頭の中がスッキリすれば、現実社会の居心地の悪さも一緒に洗い流されて忘れてしまえるからだ。
いつだってそういう結末を望んでいる自分自身の浅はかさをじわじわと明らかにする。
この映画は、映画を解体する映画だ。
良い映画だが非常に退屈な作品でもあるため評価は辛め。
彷彿した映画……落下の解剖学、悪は存在しない、CURE