同性愛・宗教・政治・不倫愛、多様に絡み合うテーマを、ヴィットリオ・ストラーロによる美しい映像で綴ったベルトルッチ監督の傑作。
ローマとパリを舞台に上流階級の退廃的なムードと芸術性に溢れた映像は、絵画のようにどこを切り取っても美しく圧倒されました。色彩も印象深い。
舞台はムッソリーニ政権下、哲学講師の主人公マルチェロは、幼少期のある経験から自分は異常なのではと恐れ、正常になりたい、社会に順応したいと願いファシズムに傾倒していく。
上流階級の女ジュリアと結婚した矢先、反ファシズムのかつての恩師の監視を命じられます。その妻アンナを愛してしまうも、やがて恩師の暗殺命令が下る…。
ムッソリーニ政権が崩壊を迎え、マルチェロの価値観が音を立てて崩れ落ちる瞬間を描くラストも秀逸。
ジュリアとアンナの性格の対比が見事。女性2人のダンスシーンとアンナが森の中を逃げ惑うシーンが素晴らしかった。アンナ役のドミニク・サンダは、当時まだ10代だったとか。妖艶な美しさでした。
主人公のマルチェロは、歪んでるし、卑怯だし、はっきりしないし、魅力的ではない。でも、家族の背景や時代もあり、孤独な人間の弱さと、普通でありたいと願う悲哀を見せつけられ、胸が痛みました。