TaiRa

知られぬ人のTaiRaのレビュー・感想・評価

知られぬ人(1927年製作の映画)
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こないだ観たロン・チェイニーは脚なかったけど今度は腕なかった。

サーカス団員である両腕のないチェイニーが団長の娘に惚れてる。惚れてるというか物にしたいと思ってる。一方で団員の怪力男も娘に惚れてるが、娘は男性恐怖症で、特に男の手に嫌悪感を持ってる。両腕のないチェイニーは自分にアドバンテージあると思い込む。基本的にずっと思い込んでる体質。実は彼、両腕はあって過去の犯罪か何かを理由に身分を偽ってるヤバい男だと分かってくるが、このチェイニーが具体的にどういう男だったのかは明らかにならない。チェイニーの顔面強めな芝居がいつも通り楽しい。段々と思い込み激しくなって暴走しちゃうチェイニーを余所に怪力男と娘がくっついてるのが切ない。チェイニーは基本的に悪漢なので同情する必要もないのだが。大きな犠牲を払って遂に娘と結ばれると思っていたチェイニーが(そもそも何の根拠もないのだが)、失恋を自覚した瞬間の顔面芝居の強さ。ここの時間のかけ方も凄みがある。チェイニーが逆恨みで企てるグロテスクな逆襲を観客に想起させる前振りが上手い。まず観客に最悪のパターンを充分に想像させた上でのサスペンス。立場を変えればヤバい男に関わってしまったカップルの話だけど、当人からしたら純粋な悲劇っていうね。現代でもよくある話。
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