ひろぱげ

チャイニーズ・ブッキーを殺した男のひろぱげのレビュー・感想・評価

3.7
題名だけは知っていたが、長らく見ていなかった作品。
チャイニーズ・ブッキーって誰やねんと思ったら、中国人ノミ屋、西海岸の大物チャイニーズ・マフィアのボス(ジジイ)のことだった。
なんでそいつを殺すことになるのか?ってのが主なストーリー。

とにかく主演、ベン・ギャザラの存在感!あの渋い声。
経営するストリップ・バー「クレイジー・ホース」とその踊り子たち、Mr.Sophistication(きったないオッサンよ)、客達への愛。様々な粋な振る舞い。素晴らしいね。
お気に入りの踊り子を車に乗せ、「ほら、これ飲みなよ」「えー、わたしマティーニがいいわ」「ドン・ペリニヨンだぜ」みたいなセリフ。オーディションで採用しようとした女に嫉妬した黒人踊り子の口に酒を注ごうとするシーン。バックステージでのアナウンス、楽屋で出演者を労ったり説得したりする口調、ステージでの口上、そしてラスト。いちいちカッコイイ。

アップを多用した画も相まって、なんだかドキュメンタリーを見ているようである。例の殺しの場面やその後の逃走劇、自分を狙ってくる奴らとの緊迫したやりとりも、劇的に見せるよりもどこか隠し気味で、肝心なショットは想像に任される作りなのも独特。

主人公のコズモは、カサヴェテス監督自身の投影であるという見方がある。移民の子であり、アメリカで自分の愛するものを作り、守ろうとする人生。大きな力を持った邪魔者に、敢然と立ち向かう根性と矜持。そう考えると、一見悲壮感たっぷりのコズモの境遇も温かいものに見え、自然と応援したくなる。

コズモに圧をかけてくるマフィアの一人、妙に顔の長いティモシー・ケリーがイイ味!
「お前、素人なんだろ?帰りなよ」とコズモに言われ、後ろに控えてたシーモア・カッセルに「あいつイイ奴だから、おれ帰る。あとよろしく」と言い残し、何とも言えない笑い顔するの。最高。
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