骨折り損

お茶漬の味の骨折り損のレビュー・感想・評価

お茶漬の味(1952年製作の映画)
3.9
冷めた熟年夫婦だが、まだそこに愛はある。

そりゃ何十年も一緒にいれば嫌なことだってたくさんあるし、綺麗事ばかりじゃない。だけど、なんだか嫌いになりきれないこともあるのだろう。

お見合い結婚が当たり前の時代に、自由恋愛をしたいと望む若者に、お見合い結婚した男は何を思うのだろう。口では「みんなやってるからお見合いしろ」と言うが、妻の前で本音が漏れる。「お見合いなんかしたって、僕らみたいなのがまた増えるだけじゃないか」
なんて情けなくて、胸にくる台詞だ。

今作もまた、監督は画一的なキャラクター造形を避け、そこに人間を宿らせている。よくあるお見合いさせるおじさんvs.お見合い拒否する若者みたいな構造ではない。今作のおじさんは自分自身の選択にも絶対的な自信が持てない。若者と同じくらい、いやそれ以上に悩む。

歳を取って、若い人に何かを教えられる人も良いけど、ただただ変わらず悩み続ける人もかっこいい。
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