ほおづき

ダンサー・イン・ザ・ダークのほおづきのレビュー・感想・評価

5.0
ミュージカルは好きじゃなかった・・・
突然歌い出す理由がわからないし、物語が遮断されて前に進まない気がしてたから。
そう思っていたんだけど、この映画を観て気づいたの。
あの唐突に始まるミュージカルは、現実逃避しようとしている主人公達が頭の中で歌ったり踊ったりしている状態を表現した妄想だったってことに。
すごく目からうろこだった。
  
わが子への愛しか生き甲斐のない不器用なセルマが、残酷で逃げ場のない現実から逃避したい一心で、周囲の少しの雑音から音楽を作り出して妄想の世界へ入っていく・・・それがとても自然でもの哀しい。
そして、突然の外部の介入によってミュージカルが一瞬で止む。一気に現実に引き戻されてる感じが表現されているようで悲惨さが伝わってくる。 
そう思ってミュージカルを観るようになってたけど
大好きな映画『勝手にふるえてろ』でも、妄想世界ミュージカルやっててびっくり。

不評なぶれぶれのカメラワークも、この作品のキーでもある「視力の低下した世界の不便さ」を表現してるのだとすれば、不快に思わせるのは演出なんだろうなって思ってる。

学もなく不器用な母親が、わが子を思うゆえに間違った判断をしてゆく悲しさがとてもつらいけど
母の愛情が感じられて好きな映画。