坂本くろみ

ダンサー・イン・ザ・ダークの坂本くろみのネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

初視聴年:2021
偶然かもしれないけど、すごく絶妙なバランスで構築されてる作品だなと感じる作品だった。
この監督の作品を後にいくつか見たけど、粗のある舞台設定を悪意と暴力表現で説得力を持たせる作風で、なんとなく理解できるものとそうでないものの差がある印象を持っているのだけど、これについてはその作風が奇跡的に持ち味になっている気がする。

とにかく間が悪くてやることなすことが裏目に出る人っているよなと思う描写と、所々に漏れ出る悪趣味な描写が合致してて独特の雰囲気を醸し出しているように感じた。
もしかしたらそういう人から見た世界はこのくらいに残酷なのかもしれないと思う説得力がある。

ちょくちょく挟まるミュージカルパートも主演のビョークの曲に聴き馴染みがあるから見ごたえがあるのだけど、終始現実逃避の手段として描かれているのが辛い。列車のシーンは作品の顔ともいえる大々的な曲選なのに描写が嫌な意味で現実にありそうな生々しさでうわっ…と漏れた。
そういう根本的には現実でもありえる苦難への向き合い方を直視するのが辛い作品だったので、ラストで救いになる出来事は一つだけ起こるのが味わいになっていたと思う。多分全てが台無しになっていたら救いがなさすぎて作品の見方が変わっていたのではないかとも感じた。